【1月10日
時事通信社】「水爆実験」実施を発表した北朝鮮は、過去の核実験などで制裁下にあるが、その中でも民間経済は拡大しつつあり、富裕層が急増している。核・
経済並進路線を掲げ、核戦力強化と同時に経済拡大を図る北朝鮮が国際的な非難を浴びても核実験を強行した背景には、比較的安定的に推移している国内の経済
情勢もありそうだ。

 金正恩体制になり、平壌では高層マンションが各地で建設され、新たなランドマークとなった。昨年には空港の新ターミナルが完成したほか、建設ラッ
シュも継続。裏で取引されるマンション価格は高騰し、1戸20万ドル(約2300万円)の物件もあるとされる。遊園地や高級レストランもここ数年間に相次
いで開業し、北朝鮮当局者は「制裁に関係なく、経済は発展している」と胸を張る。

 携帯電話の加入者は、人口の1割を超え300万人近くに達した。車やタクシーも増え、市内では渋滞も発生するほどだ。主に外国商品を扱う高級スー
パーもあり、日本のしょうゆや納豆、焼酎だけでなく、スイス製高級時計や欧州産ワインといった「ぜいたく品」として制裁対象となる商品も並ぶ。商品は中国
のほか、東南アジアなどを経由して流入しているとみられ、制裁網に穴が開いていることを示す。

 米ドルや人民元をはじめとする外貨の流通も拡大。民間経済の拡大を認めた結果、市場経済が浸透し、活発化していることが背景にある。訪朝歴の多い専門家は「商売の才覚があれば、金を稼げるようになった」と語り、富裕層に加え、中間的な消費層も生まれつつあると指摘する。

 農業や工場の現場でも、インセンティブを高めるため、国家に一定の収穫物や生産物を納めれば、残りは自由に販売することが可能となった。地方と平
壌の格差は広がっているが、慢性化していた食料難は格段に改善し、地方の幹線道路でも収穫物を売る農民の姿が増えた。平均月収を上回る外貨を含む収入を得
る労働者も増えているという。

 北朝鮮の経済発展には、貿易の9割を依存する中国の存在が大きい。緊張が激化すれば、中国側の投資心理は冷え込み、金第1書記が目指す「人民生活
の向上」路線に狂いが生じる可能性は排除できない。ただ、中国の東北3省と北朝鮮の貿易での相互依存関係も深まっており、北朝鮮政府筋は「当面(核実験
の)悪影響は避けられないが、それほど深刻ではない」と楽観的な見方を示した。(c)時事通信社

http://www.afpbb.com/articles/-/3072702 より転送